青の追憶 15

「ただいま。セイディさん、カリーナさんが果物くれましたよー!」

廊下を歩きながら私は大きい声で話しかける。居間に入るとそこで立ち止まった。

「あ、お客さんですか? すみません、大声で話しちゃって……」

一気に恥ずかしくなった。

居間にはセイディさん以外に三人の男性がいた。お客さんがいることは珍しい事ではない。だけど、いつもと違って雰囲気が硬い。

「おかえりなさい。……サラ、この方たちがあなたにお話があるみたい」

「私に?」

三人に視線を向ける。その内の一人、椅子に座っている人だけが軽く目礼した。何でか分からないけど、あとの二人は椅子に座らず立ったままだ。

「サラ、とりあえず座って。私も一緒に話を聞くから」

「は、はい。あれ? ウィリーは?」

「2階で遊んでいるわ」

「ルースと?」

「ルースは仕事に行っているから」

「じゃあ、誰か友達が来ているんですか?」

「いえ、違うわ」

そういって、セイディさんはお客さんのほうをチラリと見る。

「この方と一緒に来た人に遊んでもらっているの」

「え!? それって大丈夫ですか?」

思わず声に出して言ってしまう。

この場の雰囲気から、セイディさんとこの人達が前からの知り合いじゃないことくらいは分かる。たぶん今日、というか今、この人達がここを訪ねてきたんだろうけど、初対面の人にウィリーを預けて大丈夫なのかな? ここに一緒にいたほうがいいと思うけど。

「大丈夫です。ホゼアにはウィリー君と同じ年くらいの息子がいますから、子供と遊ぶのは慣れています」

座っていた男性が答えた。

いや、そういう意味じゃないんだけど。セイディさんを見ると

「大丈夫よ。怪しい人ではないし。ほら、上からウィリーの声が聞こえるでしょう?」

と、少しだけ笑いながら言った。確かに、ウィリー声が聞こえる。うん、楽しそうだ。

こっちに座って、とセイディさんが椅子を軽くひいてくれた。私の隣にセイディさんが座る。男性は私と向かい会う場所に座っていた。

第一印象は落ち着いた、というか、静かな感じの人だ。声も落ち着いていたし。年齢がイマイチわからないんだけど、30代後半かな? 着ている服は街のみんなが着ているような普通の服なんだけど、生地がいいのか仕立てがいいのか、少し高級感を感じる。

後ろに立っている二人は無表情。怖いよ。じっと私達を観察しているようなそんな感じがした。

「あなたがサラさんですね。失礼ですが、本当の年齢を教えてくれませんか?」

私はビクッとしてしまった。

本当の年齢……? 普通、そんな聞き方はしない。この人、何か知っているんだ。

セイディさんにどうしましょう? と視線を投げかけると、静かに頷かれた。これは、本当の事を言ったほうがいいって事だよね。

「25です」

私は男性を見ながら答えた。

「25……。やはり、間違ってはいなかったのですね。見た目がずいぶんと若く見えるので、苦労しました」

何の事だかさっぱり分からない。

「あの、きちんと説明してくれませんか?」

男性は一瞬だけ、目を伏せた後言った。

「あなたは、この世界の人ではないですね」

私は何も言わなかった。いや、正確に言うと驚いて声が出なかった。

確かにその通りなんだけど、なんで初対面のこの人が知っているのだろう?

「順を追ってお話しましょう。まず、私達ですがアルヴィナ城のものです。私は神官のジェラルド。後ろの二人とウィリー君と遊んでいるのが、私の部下です」

神官! ずっと会って話しをしてみたいとは思っていたけど、いきなり会えるとは思わなかった。

「私達はずっとあなたを探していました」

「……なんでですか?」

追われるような悪いことはしていないんだけど。

「あなたの力が必要です」

私の力って……。ずいぶん遠まわしな言い方だなぁ。言葉を選んで話しているような気がする。

「サラに何をさせる気ですか?」

セイディさんが強張った表情で聞く。

「勘が鋭いですね」

ジェラルドさんは、セイディさんを見ながら言った。

「ハヴィス城の神官がサラを訪ねてきた時点で、何かがあるという事くらいはわかります」

「では、率直に申し上げましょう。サラさん、あなたにはアルヴィナ各地に行ってもらう事になると思います」

「え……?」

「もう少し詳しく言いますと、これから私達と一緒に城へ来てもらいます。そこである事をしてもらい、証明されたら各地に行ってもらいます」

イマイチよくわからない。

「あの、ある事って何でしょうか?」

「血を注いでもらいます」

「「血?」」

私とセイディさんが声をそろえて言った。

「はい。サラさん、あなたの血が必要です」

ジェラルドさんの落ち着いた声が静かに響いた。

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