青の追憶 16

沈黙が流れる。

私は混乱する頭で、その意味を考えていた。私の血って普通の血なんだけど。

「おっしゃっている意味がよく分かりません」

セイディさんが静かに言った。

「そうですね。いきなりこんな事を言われても混乱されるだけでしょう。では、最近アルヴィナに天災が多いことはご存知ですね?」

話が変わった。

「えぇ、それは知っています」

セイディさんが頷く。

「天災が多いのは神の力に関係しているとか噂を聞かれたことは?」

「あ、私、その噂聞いたことがあります。神の力が弱まっているって……」

今度は私が答えた。

「混乱が起こらないようにあえて噂を肯定したり否定したりすることはしていませんが、実はほぼ真実です」

「リヴィエの力が弱まっている……と?」

「そうです」

「それがサラの血と関係あるのですか?」

「リヴィエの力が弱まったとき、違う世界の人間の血を注げは復活する、と言い伝えにあります」

「……そんな言い伝え、聞いたことありません」

セイディさんが言った。

「城にしかない文献に書かれています。国民は知らなくて当たり前でしょう」

私は何がなんだかよく分からなくて、とにかく話を全部聞こうとじっとしていた。

ジェラルドさんは淡々と話を続ける。

「リヴィエの力が弱まったとき、アルヴィナに天災が降りかかる。また、その時がきたら違う世界から人間を呼び出し、その者の血を水晶に与えよ、と文献に書いてありました。そこで私達は占いのようなもので……、正確には占いではないのですがそこは言えません。とにかく、この世界ではない人を呼び出しました。その結果、こちらに来たのがサラさんです。ハヴィスに現れるという事はわかっていたのですが、それがどこなのかはわからなかった。あなたがこちらに来たその日、ハヴィスのいたる所にひっそりと兵を配備させ、変わった服装の人間を見つけたら保護するようにしていたのですが……」

「サラはすぐ私の家に来てしまったので、結局見つけられなかったのですね」

「その通りです。まさか、こんなに早く街の人間と接触しているとは思わなかった。サラさん、あなたはこちらに来たとき、どこにいたのですか?」

「山の奥です。そこでウィリーとルースに会いました」

「その二人以外に人と会わなかったのですか?」

「山の中では誰とも……。麓に降りてきてからも、ルースが裏道を通って行こうと言ったので、ほとんど人に会わずにこの家に来ました」

「どうりで……。サラさんの格好を見て、何かおかしいと感じたのでしょう。ルースさんは慎重な方みたいですね」

ルースは私の事を怪しい女だと思っていたみたいだしね。

ジェラルドさんは話を続ける。

「その日に見つけれらなかったのは予定外でしたが、私はすぐ見つけられると思っていました。服装が変わっていて、言葉が通じない人間なんてそうそういません。しかも、こちらに知り合いがいる訳ではないから、きっと街で途方にくれている筈だ、と考えていたからです。だけど、なかなか見つからなかったからさすがに焦りました。そこでもう一度占いをしたわけです。やっとの事で得た情報が“20代半ばの女性”です。街中をくまなく探すように指示を出しましたが、あなたを見つける事は難しかった」

「サラの見た目ですね?」

セイディさんが言う。

「はい。兵には“最近ハヴィスの街に来たと思われる20代半ばの女性”を探しなさい、と言ったのです。サラさんの見た目では、10代後半にしか見えない。兵は誰も気がつきませんでした」

そういう事か。

「そういえばサラさんはアルヴィナ語を話せますね。それも予定外でした」

ジェラルドさんは独り言のように言う。

「ここに来た時は話せていなかったと思います。ルースとウィリーの会話も分からなかったし、私が話したらルースが驚いた表情をしていたので」

「でも、サラが家に来た時はアルヴィナ語を話していたわよ?」

セイディさんが付け加えた。

「そうなんですよね。いきなり分かるようになったんです」

「この家に来るまでの間で出合った人間は、ルースさんとウィリー君だけですよね?」

ジェラルドさんが何か考えながら言った。

「そうです」

「何かされませんでしたか?」

「何かって?」

「触れ合いというか、抱擁のようなものを……」

「抱擁という訳ではないですが、ウィリーを抱きしめたりはしましたよ」

「いえ、そういうのではなくもっと直接的に触れたり」

「直接的?」

よく分からない。

「……口づけです」

ジェラルドさんは、少し言いにくそうに続けた。

口づけ? あぁ、キスの事か。

私はあの日の事を思い出そうとした。

えーと、山の麓に下りてきた時、あまりの景色の違いに愕然として座り込んだんだよね。で、どうしよう? と考えていたら唇に柔らかいものが触れて……。

「あ……、しました。キス」

と呟いた。

「まさか、ルースが!?」

セイディさんの声が飛び込んできた。

「ち、違います! ルースじゃなくてウィリーです!」

「そ、そう、ウィリーなの。びっくりしたわ。なら、まぁ仕方ないわね。にしてもあの子、出合ったばかりの女性にキスなんて……。将来が心配だわ」

ウィリー、無邪気だからなぁ。なんていうか、本人も気がつかない内に女の子を口説いてしまいそうだ。セイディさんが困ったわ、と言う姿が想像できる。

「それが原因ですね。ウィリー君と触れることによって、なんらかの力が働いたのでしょう」

ジェラルドさんが冷静に言う。

ふーん、そんなものかな。まぁ、話せるようになったのは有難いからいいんだけど。

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