青の追憶 48

私の体力がある程度回復してから、セーファスさんの所へと向かった。

相変わらず教会は観光客で賑わっている。

フェイさんが教会の出入り口に偶然いたので、セーファスさんの所に案内してもらった。

「今日はちゃんといるんだな」

ルースがからかうように言う。

「えぇ。ここ2〜3日は、あまり出かける事もなく控え室にいらっしゃいます」

「へぇ、セーファスにしては珍しい」

「はい。いつもこのくらい真面目にしていただけると、私どもとしても嬉しいのですが……。何かご様子がおかしいので気になってはいます」

「セーファスさん、具合が悪いんですか?」

「いえ、そういう訳ではないです。セーファス様は人一倍頑丈ですから。身体の事ではなく、なにかこう考え込む事がある、という感じでしょうか」

フェイさんが少し心配そうな表情をする。

あのセーファスさんが考え込む……? 女の人絡みだろうか。

「女の事じゃないのか?」

ルースがハッキリと言う。私もそう思っていたけど、フェイさんを前にして言うなんてちょっと凄い。

フェイさんは苦笑しながら答える。

「セーファス様は女性の事で考え込むような方ではないですよ。あの方は単純明快です。興味のある方に対しては、ちょっかいを出したりするのですが、興味のない方に対しては関わりを一切持ちません。そういう意味だと、サラさんには思いっきり興味があるようですね」

女好きなのに興味のない女性とかいるのか……。って相性とか好みの問題なのかな。

「サラ、あまりセーファスに近づかないほうがいいんじゃないのか?」

「セーファスさんは私に女性として興味があるんじゃないよ。ただ珍しいからいろいろしてくるんだって」

「お前……、鈍感なんじゃねぇの?」

「失礼な。セーファスさんの好みってさ、私みたいな感じじゃないと思うんだよね。もっとこう、ゴージャス美人系じゃないの?」

「あいつ、サラを見てまぁまぁだなって言ってただろーが。それに目つきもヤバイしよ」

「ルース、フェイさんの前でそこまで言うのは……」

歯に物着せぬ言い方に、フェイさんの様子を伺ってしまう。偉い神官に向かってあまりにも失礼な事を言うとさすがに注意されてしまうんじゃ? 

ちらっとフェイさんの見ると困ったような表情をしながらも笑っていた。あ、平気みたい。

「セーファス様の気を引く女性の容姿はバラバラでして。サラさんのような感じの方もいれば、華やかな雰囲気の方もいらっしゃいます。ですが、誰もが美しいと認める女性に全く感心がなかったりしますし……。長年お傍で仕えておりますが、未だによくわかりません。ただ、なんとなくですが」

フェイさんはそこで一度言葉をとめた。

「何かあるんですか?」

ちょっと気になって聞いてみる。

「そうですね。なんと申し上げればいいのか難しい所ですが、その、変わった女性というか面白い女性……が多いような気がします」

「あぁ、少し分かるな」

ルースが頷く。

「どうして?」

「面白いことをする人の方がセーファスの雰囲気に合うだろ。あいつ自身が破天荒だし」

「そう言われればそうかも」

面白いことをする、というかセーファスさんに向かっても意見をハッキリ言って明るくて活発な人が似合いそう。

「となると、サラが面白くて変わった女って事を見抜いているのか。ふーん、神官らしくねぇけど、観察眼は鋭いんだな」

ルースがいろんな意味で失礼な事を言う。

「ねぇ、私はごくごく普通の人なんだけど」

私は特に面白いこともしないし、考え方も一般的だと思う。

「いや、サラは気がついていないかもしれないけど、お前、アルヴィナの常識からすると変わった女の部類に入るぞ」

「えぇ? どこが? セイディさんはそんな事一回も言わなかったよ」

「いや、セイディもちょっと変わったほうに入るからな……」

ルースは視線をちょっと逸らしながら言う。

ちょっと待って。私、今まで普通に生活してきたつもりなんだけど、周りから変わった人って思われていたわけ? 確かにアレシアやキャロルから、面白いねって言われた事は何度かあったけど、生活習慣が違うからだろうなって気にも留めてなかった。うわぁ、変な行動をしてなければいいんだけど。って今更遅いか……。

「セイディさんというのは?」

フェイさんが穏やかに尋ねる。

「あ、俺の姉です」

「そうですか。ただの直感ですが、セーファス様と気が合うかもしれませんね」

フェイさんはニッコリと微笑みながら言う。

「……恐ろしいことを言わないでください」

勘弁してくださいよ、といわんばかりの表情だ。

ルースの気持ちはちょっとわかる。セイディさんとセーファスさんがタッグを組んだらものすごい勢いでルースをからかいそうだ。二人から思いっきりからかわれているルースを想像するだけで笑える。思わず声を出して笑ってしまった私に

「笑ってんなよ。俺の身にもなってみろ」

と、真顔で言うルースがおかしかった。

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