青の追憶 49

フェイさんが重厚なドアをノックをする。

「セーファス様、サラさんとルースさんをお連れしました」

「あぁ、入れ」

セーファスさんは、隠し階段の入り口を塞ぐように置いてあるどっしりとした机に軽く腰掛けるように立っていた。

「こんにちは」

「サラ、体調はどうだ?」

「はい。なんとか大丈夫です」

「そうか……。あぁ、フェイ。今日は席を外せ」

「え……? は、はい。かしこまりました。では、何かありましたらお申しつけください」

フェイさんは少しだけ心配そうに私達を見た。静かに頭を下げた後、部屋から出て行く。

席を外してって言うなんて意外。フェイさんも今、驚いてたみたいだし、普段はあまりそういう事言われないんだろうな。

「で? なんだよ、話って」

「まぁ、そこに座れ。サラは座っていたほうが楽だろ」

特に断る理由もないので私達は並んで座る。

セーファスさんは腕組みをして立ったままだ。

大きな窓から眩しい午後の陽射しが入ってくる。どかな午後の時間だ。でも、なんとなく空気が重く、そして冷たく感じるのは気のせいだろうか。いつもなら会うなり軽口を叩くセーファスさんが、今日は一言もそういう話をしない。さっき、フェイさんが最近は考え込んでいるような感じがする、と言っていたけどそれと関係あるのかな。

「お前たち、この後も旅を続けるのか?」

「? はい、もちろん。あと一箇所行けば終わりですし」

「その後は?」

「前にも言いましたけど、ハヴィスに戻って……、それから私は帰ります」

セーファスさんはため息をつき、天井を仰いだ。それからゆっくりと視線を戻し、私達の顔を交互に見る。

「やっぱり……。お前ら何も知らされてないんだな」

「何のことですか?」

「おかしいと思ったんだよ。普通に旅してるし、暗い雰囲気でもない。余計な事を言うなって事前に届いた書簡に書いてあったけどそういう事だな。いかにもジェラルドがやりそうな事だ」

皮肉めいた口調だった。

「何の事だ?」

ルースが眉を軽くひそめながら訊ねた。

「サラ。お前、ハヴィスに戻ったらジェラルドが元の世界に帰る方法を教えてくれるって言ってたよな」

「はい」

「それ、嘘だ。ジェラルドはわざとそう言ったんだよ。そういえばお前が断れないって分かってるからな」

「嘘?」

心臓が大きくドクンと高鳴る。

「あぁ。俺はそういう嘘は嫌いだからな。後でギャーギャー言われるだろうがまぁいい。単刀直入に言う」

セーファスさんはいつになく真剣な表情になった。そして、私を真っ直ぐに見た。

「サラは生贄だ。元の世界には帰れないだろう」

私はその言葉をどこか他人事のように聞いていた。

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