青の追憶 50

「何……だよ、それ」

静まり返った部屋の中で、ルースの言葉がポトリと落ちた。

「言葉の通りだ」

「だから、意味が分からねぇよ!」

「水晶に血を注いだだけで、本当にリヴィエの力が復活するとでも思ってんのか?」

「……ジェラルドはそう言っていた。サラの血には回復させる力がある、と」

「回復させる力はある。が、量が足りない。今、各地を回って血を注いでいるのは、土台作りのようなものだ。次の教会で血を注げばリヴィエ復活のための力が8割溜まったって所だな。結局最後はもっと多くの血、いや、サラの力といった方が正しいか。それが必要になる」

「多くの力……?」

「サラ自身だな。だから生贄だ」

ルースが膝の上でぎゅっと握りこぶしを作っているのが見えた。

「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。嘘だろ、そんなの。今まで会った神官は一言もそんな事言ってなかった」

「当たり前だろ。ジェラルドから言うなって言われているからな。あいつは神官の中で最高の位を持っているんだ。逆らえる訳ないだろう」

「ジェラルドは最初からこの事を知っていたのか?」

「そうだろうな。サラを呼び寄せたのはあいつだ。知らないはずがない」

「全部を知っているのに、サラに元の世界に帰る方法を教えるから旅に出ろって言ったのか?」

「あぁ、そうだ」

ギリッと歯軋りの音が聞こえた。

「お前ら何なんだよ。最初から騙していたのか? いいか、サラは元々この世界の人間じゃないんだ。あっちの世界で普通に生きていた俺達と同じ人間なんだよ。それを勝手に連れて来ておいて、生贄になれだと? いい加減にしろよ!」

セーファスさんは何も言わなかった。

「何か言えよ!!」

ルースが立ち上がる。

「……本来ならこのことも言っちゃいけなかったんだけどな。このまま旅を続けると、サラは何も知らないままアルヴィナからいなくなることになる。残酷な話だけどそれよりはマシだろ?」

「ふざけんな!!」

窓ガラスがビリビリと震えたかと思った。

「お前ら……、一体……」

何かをこらえるように低い低い声で呟いた後、ルースは黙る。

しばらく重苦しい沈黙が続いた。

「ふざけんな……」ともう一度呟いたあと、ルースは誰とも目を合わせず部屋から出て行った。

「まだ話終わってないんだけどな……」

セーファスさんが小さく言う。

私はその言葉が聞こえていたけど、今、話の続きを聞こうとは思えなかった。

フラフラとドアへ向かう。

「サラ、どこに行くんだ?」

「ちょっと外に……」

「ルースを追うのか?」

「いえ……。今は、一人でいたいので」

「そうか」

セーファスさんが複雑な表情をしている。

「私はこの建物のすぐ近くにいます。大丈夫です、どこにも行きません」

「分かった」

「ルースが戻ったら呼びに来ていただけますか?」

「……分かった」

「お願いします」

私はセーファスさんに背を向けた。

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