青の追憶 56

最後の街、オシュイの入り口にたどり着いた。

「やっとここまで来たね」

「あぁ」

「行こうか」

「そうだな」

アクアとレイモンドの手綱を引いて街の中に入る。

オシュイはハヴィスと同じくらい大きな街だった。いたる所に水路があり、そこを荷物を乗せた小さな舟が行き来している。荷物の運搬には水路を使ったほうが便利な街らしい。水路が発達しているのは海に近いところだと思うんだけど。アルヴィナは国全体が大陸の中心に位置しているから海には接していない。それなのに珍しいなぁと思い地図と見たら比較的近くに大きな湖がいくつかあった。湖と湖を繋ぐように川が流れていて、その川と川の間にこの街はある。なるほど、だから水路が発達しているのか。

道を行きかう人々や舟を見ながら歩く。

まずは宿を探す事になった。といっても、ルースはいつものようにすぐに泊まる宿を見つけてきた。今回も教会からそんなに遠くない所らしい。ホント、いつの間に情報収集しているのか分からない。たまに街の人に話しかけている姿は見かけるけど、そんなに話し込んでいる様子には見えないから、街の様子とか教会や宿の情報をどこから手に入れているのか検討もつかない。やっぱりルースって凄いわ。

宿に着くと、まずはアクアとレイモンドを馬小屋に連れて行った。その後、すぐ隣にある私達が泊まる建物へと移動する。日本でいうなら高原にあるペンションみたいな建物で、今回もとても居心地の良さそうな宿だった。

「すみません、しばらくここに泊まりたいのですが部屋は空いていますか?」

ルースが宿の人に尋ねている。

「あら、ありがとうございます! もちろん空いていますよ。お部屋は一つでいいのかしら?」

宿の女将さんが明るい笑顔で言ってくる。

「いえ、出来れば2部屋とりたいのですが……」

「まぁ、ごめんなさい。早とちりしちゃって。2名様で2部屋ですね。こちらの宿帳にお名前を書いて少々お待ちください」

そう言うと、奥の部屋へ入り鍵を二つ持ってきた。

「2階のお部屋になります。こちらが鍵になりますのでどうぞ。お荷物を運びましょうか?」

「いえ、大丈夫です」

「何かありましたらいつでも声をかけてくださいね。では、ごゆっくりどうぞ」

朗らかな笑顔を見せながら鍵を渡してくれた。なんかいいなぁこの人。心が温かくなる。

「ここの宿の人も良さそうな人だね」

2階への階段を上りながらルースに話かけた。

「あぁ、そうだな。街の人達がこの宿は評判が良いって言っていたのが分かるな」

「そうだね。なんか、カリーナさんを思い出しちゃった」

カリーナさん達の宿もハヴィスでは人気があって、いつも明るい笑顔で溢れていた。アレシアやキャロルは元気かな?

「確かにここはカリーナの所と雰囲気が似ているな」

ルースもそう思ってくれたらしい。

私達が泊まる部屋は2階の一番奥にあった。

「俺が201で、サラが202号室でいいか?」

「うん、どっちでもいいよ」

「じゃあ、この鍵だな」

「ありがとう」

ルースから鍵を受け取る。

「サラ。今日は教会行くのを止めて休むか?」

「ううん、すぐ行こうかなと思ってる。着いたばかりで疲れてるかもしれないけどいい?」

「またお前はそういう事を。俺よりサラの方が大変だろ」

「だって、私はこの後寝ちゃうしさ……。やっぱり教会からここまで私を運ぶの大変でしょう?」

「大丈夫だって何度言えば分かるんだよ」

「そうかもしれないけど……」

やっぱり気になるんだよねぇ。気を失った人ってやけに重く感じるし。

「まぁいい。準備できたら声をかけろよ。俺は部屋で教会の位置を確認しておくから」

「分かった。後で行くね」

私達はそれぞれの部屋へと入った。

202号室は、ドアを開けると真正面に大きな窓があった。その外側にはバルコニーがある。

今までバルコニーがある宿はあまりなかったから珍しいな。窓を開けると午後の柔らかな風が部屋の中に入ってきて、淡いベージュのカーテンがふわふわと揺れる。部屋の中を見渡すと、201号室の壁側に木製のベット。そしてテーブルと椅子とクローゼットが置いてある。一般的な宿と同じなんだけど、一つだけ違うのは絵が飾ってあることだった。建物と水路が描かれいるから、間違いなくこの街の絵だろう。太陽の光で街がほのかに赤く染まっており、絵なのに透明感があってとても美しかった。この街もこんなにキレイな表情をするんだ……。そんな事を思いながら荷解きをした。

「ルース、いい?」

扉の外から声をかけた。すると、すぐに扉が開いた。

「あぁ、大丈夫だ。サラは準備できたか?」

「うん。といっても簡単に荷解きしただけだから」

「ま、そんなもんだよな。俺も地図を見てただけだし」

「教会はここから遠いの?」

「そんなに離れてはないな。歩いて10分という所だろ」

「そっか。じゃあ行こうか」

私達はすぐに出かけることにした。

宿を出るとルースは迷いもせずにある方向へと歩き出した。

「地図持っていないけど、分かるの?」

「あぁ、教会は一番端にあるんだ。それに屋根が見えないか?」

そう言うとある方向を指差した。あ、確かに。今までの教会と同じような尖がった屋根が確認できた。教会は他の建物よりも立派だからそれなりに大きくて目立つ。

「ここの教会はどんな感じかなぁ。キセやヨタハの装飾はすっごくキレイだったし、クラカイは絵本に出てくる感じで可愛かったよね」

「ここも結構大きい街だからな。教会も豪華なんじゃねぇの?」

「そうだね」

水路を眺めながら私達は教会へと急いだ。

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