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青の追憶 63

「で? サラ。世間話じゃなくて、何か話したいことがあったんじゃないのか?」

ジュースを飲みながら雑談をすること30分、ルースが切り出した。

なんとなく伝わってしまったのかな。

「……実は聞いて欲しいことがあるんだけど」

「なんだよ」

私は一呼吸おいてから、ハッキリと言った。

「私、明日の朝、レヴィンさんの所に行くね」

ルースの顔がこわばった。

「なんで?」

私は何と答えていいのか一瞬迷ってしまい視線を逸らした。

「もしかして……、生贄と関係あるのか?」

「そう」

今度はルースの瞳を見つめながら答えた。

「何言ってんだよ?」

「……」

「サラ、ちゃんと言えよ!」

「もう……決めたの。あ、そうだ、ハヴィスに戻ったらセイディさんに伝えて。一緒に暮らせて本当に嬉しかったですって。ウィリーには楽しかったよって。それからカリーナさん達とアレシアとキャロルと……」

「止めろ」

「え?」

「いつかアルヴィナが滅びるならそれがこの国の寿命だ。そしてこの国に生きる俺達の寿命だ。セーファスもそう言ってただろ? その通りなんだよ! お前が犠牲になる必要はない。他の奴らがなんと言おうと関係ない。放っておけばいい」

「私もそれは考えた。だけど、やっぱり出来ない」

「どうして!?」

「私、この国の人達の事、好きだから。みんなが助かる方法があるなら、やっぱり生きていて欲しい」

「だからってお前がいなくなったら……」

ルースはいきなり言葉を切った。

「な、んだ? いきなり、力が入らなく……」

頭を支えるように手を額に押し当てている。

「大丈夫、眠ったら治るみたいだから」

「!! さっきのジュースに何か混ぜたのか!?」

「よく眠れる薬って言ってた。ちょっと力が抜けるらしいけど」

ルースはとっさに自分の手を口に入れた。私はその手を掴み、握り締める。

「吐こうとしないで。一度効き始めたらもう遅いよ」

ルースは顔を歪めて「どうして……」と呟いた。

私はルースの瞳を見つめた。

本当に綺麗な青色だ。晴れ渡った空のような青色。アクアマリンの色に本当によく似ている。その瞳が切なげに揺れた。

「サラ、あの時言った言葉は嘘だったのか?」

「……。」

「生きていたいって」

「嘘じゃないよ」

「だったらなんでだ? 俺と一緒に居てくれって言った時、お前は一緒にいる事を選んでくれたんじゃないのか!?」

ルースが叫ぶように言った。私の手を振りほどき、私の肩を掴む。

が、すぐにその手はダラリと落ちた。薬が効いているから力が入らないのだろう。

私は両手でルースの頬を包んだ。近くでよく見ておきたかった。

「ルース」

ルースは何も答えない。

「私、いろんな人に助けられたの。本当に感謝してる。だからみんなの悲しい顔見たくない。本当の寿命が来るまで生きていてほしい。分かるよね?」

「……だから……って……お前が……い、けにえなん……かに……」

薬がさらに効いてきたせいか口調がゆっくりになる。

「うん、正直に言うとそう思った。私はそんなに良い人じゃないし。でもさ、これしか思いつかなかった」

「サ、ラ……」

瞳が閉じかけている。きっと限界なのだろう。ルースを見つめながら言った。

「ルース、ありがとう。……また、いつか、ね」

私は今までの想いを込めて唇を重ねた。

月明かりが部屋をぼんやりと照らす、静かな時間だった。

私はルースの手を握りながら、ずっと顔を見つめていた。眠っているから青い瞳はもう見えない。だけど、ルースの姿を目に焼き付けておきたかった。

やがて空が少しずつ明るくなってきた頃、私はペンダントを置いて部屋を出た。宿の外に出ると、東の空には朝日が昇り始めていた。

柔らかいオレンジ色の光が空と雲を染めている。

あぁ、この空の色はどこの世界でも一緒なんだなぁ……と、私は泣きながら空を眺めていた。

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