青の追憶 68

カーテンを開けると、真っ青な空に一筋の飛行機雲が見えた。今日もいい天気だ。

ハワイでの出来事から数か月、季節は秋を迎えていた。

私は日本に戻ってきてから就職活動を始め、今は新しい職場で働いている。しばらくは慣れるのに必死だったが、最近ようやく落ち着いてきた。仕事に集中しているときはいいのだが、電車に乗っている時や帰り道、ふとした瞬間にアルヴィナのことを思い出す。今更どうすることも出来ないのにね。でも、特別な出来事だったのだ。忘れることは一生ないだろう。

ハワイで私を助けてくれた神崎さんとは今もメールでやりとりをしている。

神崎さんにあの後のルースの事を聞いてもいいのかどうかすごく迷ったけれど、私は聞かないことにした。

アルヴィナは大丈夫だった。みんなきっと自分の人生を生きたんだ、と思っている。

向こうもそれについては触れてこなかった。

そういう訳でお互いに近況報告のメールだけをしている。

先日、神崎さんからのメールで「今度、日本に一時的に帰ることになったから、どこか案内してくれ」と言われた。

神崎さんに会ったら、アルヴィナの事やルースの事を聞きたくなってしまう気がして、少し迷った。だけど、会わないのも寂しいなと感じたのも事実だ。だから会うことにした。

約束の日が今日だった。待ち合わせ場所は空港。

私はなんだかボーツとしてしまい、話はしてみたいのに何を話せばいいのか良くわからないな、と思ったりした。

あのハワイで会った時、神崎さんが叫んだ言葉の真意は聞けないまま帰ってきてしまった。

あれは、神崎さんの言葉だったのだろうか、それとも……。

空港にはこれから旅行に行く人、出迎える人、見送る人、出張の人などたくさんの人で溢れていた。

私は人々の間を歩きながら、到着ロビーで電光掲示板を確認する。

えーと……、もう到着しているみたい。予定より早く着いたのかな。

とりあえず出てくるのを待とう、と近くの椅子に座った時だった。

ブー、ブー、ブーと携帯が震えた。あ、メールだ。

“展望台にいる”

要件のみのシンプルなメール。なんとなく笑ってしまう。神崎さんらしいといえばらしいんだけど。

私は携帯をしまうと展望台へと向かった。

扉を開けると、ゴォォ……と音を立てながら飛行機が次々と飛び立っていく姿が見えた。

展望台にも人は多く、飛行機を眺めたり写真を撮ったりと、みんな思い思いの時間を過ごしていた。

私はゆっくり歩きながら神崎さんを探す。が、なかなか見つからない。周りの人達は基本的に家族連れやグループやカップルなどで、一人でいる人がいない。

どこかで見つけられるだろうと思っていたけれど、それらしい人を見つけられないまま展望台の端まで来てしまった。

もう一度戻りながら探そうかな。

風が吹き抜け、私の髪が舞った時だった。

「沙良」

泣きたくなるほどの懐かしさがわき上がる。私はゆっくりと声がする方へと振り返った。

「久しぶり」

そこには笑顔の神崎さんがいた。

なんでそう思ったのかは分からない。でも、そう思ったのだ。

あぁ、ここにいるんだ……って。

澄み切ったアクアマリンのような青空がどこまでも広がっていた。

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